2025/4/26

エクセルで母分散の信頼区間の簡単な求め方【コピペですぐに使える】

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はじめに

エクセルで母分散の区間推定を行うことができます。 母分散の信頼区間の上下限の値を直接算出できる関数はありませんが、 CHISQ.INV 関数を使った計算で算出できます。

下にサンプルのセルデータがあるので、 コピペですぐに使用できます。

母分散の信頼区間とは

信頼区間は、ある一定の確率で母集団の真の値が存在する区間のこと です。

  • 具体例:「母分散の95%信頼区間は X1X2X_1 \sim X_2」=「母分散が95%の確率で X1X2X_1 \sim X_2 に存在する」

いつ使うのか?

手元にあるサンプル(標本)データから、母集団の分散値を推定する際に使用します。

エクセルでの算出方法

以下の 全セルをコピー ボタンをクリックし、エクセルの A1 セルに貼り付けると、 D13D14 セルに母分散の95%信頼区間の上下限(下記の場合 20.64330496, 0.897401296)が算出されます。

A列のデータを書き換え、 データ数に応じて D4D5セル中の参照範囲を書き換えることで、 各自のデータにあわせて計算できます。

D2セルの値を 0.99 に変更すると、99%信頼区間が算出されます。

ABCDE
1データ
2X信頼度(信頼係数)0.95
311
412不偏分散=VAR.S(A3:A7)
513サンプル数=COUNT(A3:A7)
614
715α=1-D2
8自由度=D5-1
9χ^2 (下側確率)=CHISQ.INV($D$7/2,D8)
10χ^2 (上側確率)=CHISQ.INV(1-$D$7/2,D8)
11
12信頼区間
13上限=$D$4*($D$8)/$D$9
14下限=$D$4*($D$8)/$D$10

算出手順

エクセルで信頼区間の上限・下限を算出するための手順は以下の4つです。

1. パラメータを設定

計算に使用するパラメータを設定します。 ここで設定するパラメータは以下です。

  • 信頼度(信頼係数): 信頼区間の信頼度。0.95を設定すると95%信頼区間が算出される。

2. データの基本統計量を算出

データから不偏分散、サンプル数(データ数)を算出します。 それぞれ使用する関数は以下の通りです。

  • 不偏標準偏差: VAR.S 関数
  • サンプル数(データ数): COUNT 関数

3. カイ二乗値を算出

信頼区間の算出(手順4)で使用するカイ二乗(χ2\chi^2)の値を算出します。

3a. αと自由度を算出

カイ二乗値の算出に必要な以下の2つの値を算出します。

  • α = 1 - 信頼度(信頼係数)
  • 自由度 = サンプル数(データ数)- 1
3b. カイ二乗値を算出

CHISQ.INV 関数を使用して、カイ二乗値を算出します。 CHISQ.INV 関数では、カイ二乗分布の 下側確率(左側確率) を指定する必要があるため、 信頼区間の上下限のそれぞれに対応する第1引数の値は、以下になります。

  • 下限に対応する値: α/2 (95%信頼度のとき 0.025)
  • 上限に対応する値: 1-α/2 (95%信頼度のとき 0.975)

CHISQ.INV関数

第2引数の自由度のカイ二乗分布のときの、第1引数の確率に対応するカイ二乗値を返す。
ここでの確率は、カイ二乗分布の下側確率(左側確率)を表す。

例:=CHISQ.INV(1-D7/2,D8)

  • 第1引数 (1-D7/2): カイ二乗分布の下側確率(必須)
  • 第2引数 (D8): 自由度(サンプル数-1)(必須)

4. 信頼区間の上限・下限を算出

手順2, 3で算出した値を使い、信頼区間の上限・下限値を算出します。 手順3bで算出した、上限・下限のそれぞれに対応したカイ二乗値を使用することで、 信頼区間の上限・下限の両方が求められます。

  • 信頼区間の上限(下限): 不偏分散 × (カイ二乗値 / 自由度)